医療事故調査制度1年の動向

2016年、皆様にとってどのような1年でしたでしょうか。

 

本年は、新しくこのホームページを立ち上げました。

当初、月に1度のペースを目標にブログを更新して、情報発信をしていこうと思っていましたが、ホームページ開設からわずか4か月でその目標が達せなくなってしまいました・・・。

2017年は、この目標をきちんと達成できるように精進して参りたいと思います。

 

さて、本年は、医療事故調査制度が昨年10月1日の運用開始から1年を迎えました。

これを受けて、(一社)日本医療安全調査機構では、本年11月に「医療事故報告等に関する報告について―医療事故調査制度開始1年の動向」が公表されました。

機構では、本年7月に、「医療事故報告等に関する報告―制度開始6か月の動向―」として平成27年10月から本年3月までの制度運用状況の報告がありましたが、今回の「1年の動向」は同じく平成27年10月から本年9月までの1年分の運用状況を報告するものです。

「6か月の動向」は既に刊行物として冊子での入手が可能です。

 

【6か月の動向】

https://www.medsafe.or.jp/modules/news/index.php?content_id=26

 

「1年の動向」は、Web上から「要約版」「数値版」がそれぞれおpdf形式で入手可能です。

 

【1年の動向】

https://www.medsafe.or.jp/modules/news/index.php?content_id=30

 

「1年の動向」の「数値版」を見ると、医療事故調査・支援センターへの相談件数・内容や診療科別の報告状況等が統計的にまとめて報告されています。

この中で、いくつか、個人的に気になった点をご紹介します。

 

死亡から事故報告までの期間として、最短で2日、最長で237日、平均31.9日という結果が報告されています。

医療事故調査制度の対象となるのは死亡事例であるため、原因究明のためには病理解剖を前提とした調査が行われることが極めて重要であると思います。

一方で、ご遺体は亡くなったその瞬間から死後変化が生じる上、医療法上の「医療事故」として適時に報告されないと、ご遺族がご遺体を荼毘に付してしまうこともあり得ます。

そのため、医療事故調査制度では、初動が極めて重要であるといえるでしょう。

ところが、上記報告結果を見ますと、死亡から報告まで平均31.9日、最長で237日という例もあったようです。

237日というのは極端な例かもしれませんが、報告までの間に病理解剖が実施されていなければ、もはや解剖を前提とした調査は実現し得ません。

迅速かつ適時の報告がなされることが、今後の課題のひとつといえるでしょう。

 

それでは、解剖はどれほど行われているのでしょうか。

「1年の動向」では、解剖・Ai(Autopsy imaging:死亡時画像診断)の実施状況も報告されています。

これを見ると、本年9月末時点で院内事故調査報告書が作成された全161件のうち、解剖が実施された例は52件と全体のおよそ3割にとどまっています。

様々な理由で解剖の実施が困難な場合でも、Aiにより死亡時点での身体情報を保全することが可能な例もありますが、Ai実施例も56件と全体の約3割程度です。

ちなみに、両方行われた例はわずか19件であったそうです。

解剖もAiも施設によっては実施困難なケースもあろうかとは思いますが、医療事故調査等支援団体との連携により少しでも実施例が増えていくことが望まれるところです。

 

医療事故調査制度運用開始から1年が経ちましたが、私としてはまだ1年と受け止めています。

経験のないことでもあり、多くの医療機関で医療事故調査制度上の院内事故調査を行うことへのとまどい・困惑等があると聴きます。

今後、少しでも多くの事例が報告されたり、医療機関相互での情報交換等を積み重ねていくことが重要だろうと思います。