診療情報を確実に伝達するためには

昨日の報道で、大変痛ましい病院での事故に関する報道がありました。

 

【NHK NEWS WEB 2017.1.30】

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170131/k10010858971000.html

 

検査の結果、肺がんの疑いが指摘されていたにもかかわらず、その後の診療でこの結果が把握されないまま1年以上無治療で経過してしまったというものです。

上記報道の中でも引用されているように、つい最近、愛知県内でも類似の事故があったことが報道されたところです。

 

【朝日新聞DIGITAL 2016.12.26】

http://www.asahi.com/articles/ASJDV5CQKJDVOIPE01J.html

 

私自身も、類似の事例を事件として扱ったことがありました。

当時は、こういうケースはかなり珍しいのではないかと思っていたのですが、上記NHKの報道によれば、日本医療機能評価機構では類似のケースに関する報告を、平成16年以降40件把握しているとのことで、こうした事故も一定数存在するのだなと思いを新たにしたところです。

 

このような伝達漏れはどうしたら防げるのでしょうか。

電子カルテが導入されている施設であれば、重要な診療情報に対するフォローアップがされているかどうかを自動検出したり通知したりといったことができるシステムが構築されるとよいのかもしれません。

しかし、最終的には人が確認しなければならない、人の作為が介在せざるを得ないので、それだけで万全かと言われると決してそうではないと思います。

むろん、電子カルテを導入していない施設では、人による確認に頼らざるを得ません。

 

では、どうすればよいか。

人的にも物的にも、およそ“完全”といったものを構築することは難しいと思いますが、少しでもこれに近づける体制を構築されるためには、こうした事故が起きてしまった背景事情をきちんと調査する必要があるのではないでしょうか。

こうした調査の結果を踏まえて、改善すべき点を改善する、足りないものを補うといった作業を積み重ねていくことが重要であろうと思います。

 

ところで、重要な診療情報の伝達漏れにより万一にも患者さんが亡くなってしまった場合、これは医療事故調査制度上の「医療事故」に該当するのでしょうか。

昨日、報道を受けて所内でも少しディスカッションしたところでもあるのですが、医療安全、再発防止という本制度の趣旨に立ち返れば、こうした事案こそ報告の対象とされ、院内調査が行われるべき事案であるでしょう。

しかし、「予期せぬ死亡・死産」という要件との関係では、非常に判断が難しい局面であるようにも思われます。

「医療事故」の定義のあり方については、厚労省の検討会でも色々と議論のあったところではありますが、制度趣旨が全うされるような運用、改正が期待されるところです。

 

※上記議論は、あくまでも一般論として措定したシチュエーションです。

 報道のあった患者さんにおかれましては、いち早くご快復されることを心より祈念しております。