今月13日、医療事故の再発防止に向けた提言の第1号が公表されました。
【医療事故調査・支援センターWebページ】
https://www.medsafe.or.jp/modules/advocacy/index.php?content_id=3
2015(平成27)年10月に医療事故調査制度の運用が開始されて以降、医療事故・調査支援センターがこうした再発防止に向けた提言を発表したのは、今回がはじめてのことのようです。
今回は、「中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析―第1報―」とのタイトルになっています。
「第1報」とされていることから、今後改訂の予定があるのかと思って見てみると、「1.はじめに」に、中心静脈穿刺に関連する死亡事例は従前から少なからず報告されており、医療事故調査制度開始後も依然として報告がされていることから、中心静脈穿刺合併症に係る死亡回避という重要課題に鑑みたとき、提言の改訂も含めた継続的検討を要するという認識のもと、「第1報」と位置づけたとのことでした。
ちなみに、提言で引用されているところでは、(公財)日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業によって収集・公開されたデータ(平成22年1月1日から平成28年8月22日)のうち、中心静脈カテーテルに関連する死亡例は122例であり、
そのうち、先生に関連するものは31例(25%)ともっとも多いようです。
今回の報告で分析の対象となったのは、中心静脈穿刺合併症に係る10例の死亡事例です。
全部で9つの提言がされており、
1)【適応】について
2)【説明と納得】について
3)【穿刺手技】について
4)【カテーテルの位置確認】について
5)【患者管理】について
の中心静脈穿刺を実施する各段階について、それぞれ提言がされています。
【穿刺手技】の提言(提言3~6)の関係では、Webページ上で動画による解説も閲覧できるようになっています。
こうした取り組みは、本制度の成果を臨床の現場に還元するものであり、再発防止を趣旨とする本制度の根幹をなすともいうべき非常に重要な取り組みでしょう。
今回の提言のように、単にとりまとめて分析・報告を行うだけでなく、課題の重要性に応じて継続的な検討を行っていくという姿勢もまた、制度趣旨を追及する姿勢の表れと評価できるものと思います。
なお、医療法6条の16では、各医療機関から報告のあった情報の整理・分析や、医療事故の再発防止に関する普及啓発は、医療事故調査・支援センターが行う業務として明記されているところです。
今回は提言の第1号ということですので、今後も第2号、第3号として提言が重ねられていくことでしょう。
ただし、このように提言が重ねられていっても、それがきちんと臨床や教育の現場に反映されていかなければ、せっかくの取り組みも無意味となってしまいます。
こうした提言がどのように現場で活用されているかといった点も、今後の関心事として注目していきたいと思います。