とても心の痛む報道を目にしました。
【中日新聞 2017.5.23】
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2017052390143241.html
甲状腺の手術後の出血により気道が圧迫されたことが原因で亡くなられてしまったという事案のようですが、各種報道によるところでは、当該病院では過去に2回同種の事故が起きたため、再発防止策として頸部手術後のガイドラインを作成していたものの、現場では十分に周知されていなかったとのことです。
医療事故が起きた場合、医療事故調査制度の目的がそうであるように、丁寧な原因分析とその結果を踏まえた再発防止策の立案が不可欠です。
私たちも医療事故に遭われた患者さん・ご遺族の代理人として対応させていただき、話合いによる解決が期待できるとなった場合には、多くの事案で、再発防止策の立案や実践を病院側に約束してもらうことをしています。
しかし、どんなに立派な再発防止策を謳い、大勢の専門家が集まってガイドラインが作られても、それが臨床の現場で実行されていなければ「絵に描いた餅」で終わってしまいます。
医療事故の再発防止策には、より医療を安全にしたいという医療者の方々の思いだけでなく、医療事故に遭われた患者さん・ご遺族の、我が身に起きたことをせめて次に生かしてほしい、同じような出来事で悲しむ人を増やしたくないという思いが込められているように思います。
それが、今回のように「絵に描いた餅」で終わってしまっては、患者さん・ご遺族の期待や願いは大きく裏切られることになるのではないでしょうか。
事故から学ぶということは、言うは易く行うは難しです。
しかし、現場の医療者の方々には是非、事故から得た経験を臨床現場に還元するための方法を模索し続けてほしいと思います。
私たちも、再発防止策の立案・実施を約束してもらっても、なかなか「その後」を見届けることができないという実情もあります。
再発防止策が確実に現場で生かされるためにはどうしたらよいか、私たちも考え続けていかねばなりません。